店長日記

銀器にまつわるうんちく話 その7 ビスケットウォーマーとは

2023年08月25日

ビスケットウォーマーとはなんでしょう?

ビスケットと言いますが、実は今で言うスコーンのようなものを温めておく銀器のことです。ヴィクトリア時代中期ごろから1920年代くらいまでと比較的短い間に使われていたようです。

当店でもとても人気のあるビスケットウォーマーですが、非常に珍しい銀器なのでイギリス人でもアンティーク銀器に詳しい人でないと知っている人はほとんどいません。

ビスケットウォーマーに関する記述はいろいろ探しましたが、あまり見つかっておらず、制作されていた年数も70年余りと短く、この銀器がどのような家庭でどのような位置を占めていたのかは銀器自体の作りや数少ない写真などから想像するしかありません。

銀器は直接火の前にかざす銀器であることから火に強いニッケルシルバーの地金を使ったシルバープレート製のものであることが多いです。純銀のものはたまにあります。

しかし、実用一点張りでは全くなく、装飾は凝ったものが多く、外側の彫刻が見事なもの、スタンド部分の鋳金細工が凝ったもの、内側のグリル(仕切り)が美しいものなど、手間暇をかけて作られたものが多い印象で、貴族やお金持ちのテーブルやピクニックなどに彩りを添えるものだったのかと窺えます。 

ヴィクトリア時代終わり頃の写真で、貴族と思われる人々のピクニックで、ビスケットウォーマーが写っている写真を見たことがあります。アフタヌーンティーなどのテーブルで使われたこともあったのかもしれませんが、おそらくですが、店主の勝手な想像では、どちらかといえばピクニックや狩猟などで温かいものが簡単に食べられないような時にこの銀器が使われたことが多かったのではないか、と思っております。銀はもとより、シルバープレートの地金のニッケルシルバーも熱伝導率が高く、さらに毛布で包めばかなり長い間銀器を温めておくことができます。 そのため、貴族やお金持ちの人々がピクニックに遠出した際や、狩猟中の中休みなどに温かいビスケット(スコーン)が食べられる、というわけです。

ビスケットウォーマーにはいろいろな仕掛けをつけて特許をとっているものもあります。ボタンを押して開閉するもの、内側のグリルが二つのボウルの間にストンと落ちて仕切りが倒れてこないようになるものなど、たいした仕掛けではないのですが、特許の刻印がある、ということはそれまでにはそのような作り方はされてこなかったのでしょうね。
産業革命を起こした国だけあって、この時代のイギリスは本当にいろいろなものが発明されたり改良されたりしており、そういう発明をしては特許を取ろうとする人も多く、特許局もかなり忙しかったようです。

ビスケットウォーマーは時代の流れで需要がなくなってしまったようで20世紀に入るとあまり作られなくなってしまっいました。しかし、この摩訶不思議な銀器はいろんな人を魅了する力があるようで、現代でも世界各国のアンティーク銀器ファンに人気があります。



今日の新商品としてご紹介しているハンドバッグ型ビスケットウォーマーです。



詳しくはこちらから https://victoriantearoom.ocnk.net/product/2580


今までご紹介したビスケットウォーマーの数々(売却済みのお品です)


ビスケットウォーマー制作の第一人者として有名なFenton Brothers の 1851年制作のシェル型ビスケットウォーマー


スタンド部分の鋳金細工が美しい、シェル型ビスケットウォーマー


非常にレアな純銀製、3面のビスケットウォーマー


薔薇の透かし細工のスタンドが見事


美しい透かし細工のグリル


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