ヴィクトリア時代中期から後期のとても美しいティーキャディーをご紹介いたします。
チェイシングという彫刻の技法はノミとハンマーを使い手作業で金属の表面に凹凸を付けていく、気の遠くなるような手のかかる技法ですが、こちらのお品は、フラットチェイシングという、あまり大きな凹凸をつけず、浅く、凹凸をつけて表面の形は変えずに彫刻に奥行きを持たせる技法を、全面に使っています。
ビクトリア時代の質の高いお品のチェイシング技法は特に彫刻が細かく、丹念に造られており、ビクトリア時代の職人芸の質の高さには本当に感心させられます。
それも、そのはず。こちらのお品は1750年代から続いていた老舗中の老舗、Atkin Brothers のものだからです。
イギリスのシルバースミスは、イギリスが一番繁栄していた、ビクトリア時代に創業したところが多いのですが、この時代から続いている老舗は、中産階級の人々が富を得るようになる前、銀製品を所有することが王侯貴族と大金持ちの特権であった時代から、彼らのためのシルバースミスだったのです。
特にこのAtkin Brothersは質の高い職人がいることで有名でした。それは彫刻だけでなく、このお品の美しいフォルム、一部のすきも無くぴったりとピンがはまった蝶番など、金属工芸としての技術の高さに見てとれます。
この、お品はHenry Atkinが亡くなって、3人の息子Harry, Edward, Frank が代をついでからのお品です。メーカーズマークに3人のイニシャルがあり、そのことがわかります。
1853年から1925年のことですが、お品は、1870年ごろから1890年ごろのものだと思っています。
ビクトリア時代に紅茶は、王侯貴族や大金持ちの人々の間で飲まれていたものですが、当時のティーキャディーには使用人が勝手に飲んだりしないように、木製のものには鍵つきのものもよくありました。
このような銀製品のものは紅茶を保存する、というよりも、お客様にお出しするときに見栄えが良いように、美しい装飾が施されていたものだと思います。
現代では、もちろんティーキャディーとしても使えますが、お砂糖つぼとして、トリュフなどのチョコレートを入れたり、小さめのビスケットジャーとしてもいいですね。
1日見てても見飽きないほど美しいティーキャディーです。これを手に入れられる方は、英国のすばらしい歴史を切り取って所有できる、といっても言い過ぎではないかと思います。
サイズ
幅 約 11.5cm
奥行き 約 8.3cm(一番広い部分)
高さ 約 10cm
重さ 約258g
こちらの商品は送料無料となります。