2023年06月05日
銀にまつわるうんちく話その2
ヴィクトリアンロココとは
ヴィクトリア時代、中期から後期にかけて、ロココスタイルの再流行がありました。イギリスの当時のシルバースミスはユグノーという、フランスから追い出されたのプロテスタント教徒の子孫が多かったはずなのですが、フランスを離れて数世代を経てしまうとデザインもオリジナルのロココからちょっと離れてしまうものなのですね。ロココデザインは左右非対称であることが鉄則のはずですが、なぜか、イギリスのロココリバイバルは左右対称になっているものも多いです。
ヴィクトリアンロココはおそらく、日本語だと思います。というのは、イギリスで、そういう言い方を聞いたことがないからです。 おそらく、日本のアンティークシルバーの権威である、大原千晴氏がそう呼んだことからかと思います。
イギリスでは今日ご紹介した、マーティンホールのティー&コーヒーセットと同じスタイルのものだけ、ルイ・スタイルと呼んでいます。ロココ時代のフランス王の名前に因んだものと思われます。
ルイ・スタイルは写真のように鳥の摘み、鷲のスパウト、ギリシャ神話の神様のモチーフ、 が必ずセットになってついています。
他にも例をあげますと、
こちらはトップは鳥のつまみではないのですが、うーん、ルイ・スタイルと言っても良いと思います。
他にも、薔薇などのお花の彫刻、スクロールや貝のモチーフなどお決まりはあるのですが、薔薇などのお花の彫刻、スクロール装飾で装飾されていても、上記のモチーフのないものは、イギリスのディーラーさんたちはルイ・スタイルとは呼んでいないようです。
そういうものはただ単に Victorian ornate tea set (ヴィクトリア時代の華やかなティーセット)とか、Rococo style tea set などという呼び方をしています。Rococo revival という言い方もします。
前回ご紹介したシルバープレートのティーセットや
以前にご紹介した純銀のティーセットなどですね。こちらなどはシェイプもデザインもルイ・スタイルに似ているのですが、ルイ・スタイルとは呼ばないようです。
当店は日本のお客様がロココスタイルの華やかなスタイルをお好みな場合が多いので、主にロココスタイルのものをご紹介しておりますが、実際にはイギリスの銀器はつるんとした鏡面のものが多く、欧米の人には鏡面の銀器の方が好まれているようです。
なかなか最近は中国や韓国の方もアンティーク銀器にかなり興味があるようで、やはり、アジアの方はロココ系のデザインがお好きなようですので、ヴィクトリアンロココのものはどんどん少なくなってきています。
アンティーク品は一期一会ですので、これだ!というのが見つかったらぜひ、手に入れてくださいね。